[行列解析1.3.P38]全成分1行列を用いた行列の固有値と逆行列

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.3.P38

1.3.問題38

\(J_n\) をすべての成分が 1 の行列(0.2.8)とし、次の行列を定義する:

B(t) = (1 - t) I_n + t J_n, \quad n \ge 2

(a) \(B(t)\) の成分を説明せよ。また、その固有値が次のようになる理由を説明せよ:

\lambda_1 = 1 + (n-1)t, \quad \lambda_2 = 1 - t \text{(重複度 } n-1 \text{)}

(b) \(t \neq 1\) および \(t \neq -(n-1)^{-1}\) の場合、\(B(t)\) が正則であることを確認せよ。また、その逆行列は次の通りである:

B(t)^{-1} = (1 - t)^{-1} \left( I_n - \frac{t}{1 + (n-1)t} J_n \right)

ヒント

行列 \(J_n\) はすべての成分が \(1\) であるため、任意のベクトルとの積は成分和に依存する。特に、\((1,1,\dots,1)^{\top}\) とそれに直交する部分空間で作用が異なることに注目すると、固有値の構造が理解しやすい。また、逆行列の形は \(I_n\) と \(J_n\) の積の性質 \(J_n^2 = n J_n\) を用いて確認できる。

解答例

(a) \(J_n\) はすべての成分が \(1\) である行列であるから、\(B(t)=(1-t)I_n+tJ_n\) の成分は、対角成分が \(1-t+t=1\)、非対角成分が \(t\) となる。すなわち、

B(t)_{ij}=
\begin{cases}
1 & (i=j),\\
t & (i\ne j)
\end{cases}

である。ベクトル \(\mathbf{1}=(1,1,\dots,1)^{\top}\) に対しては \(J_n\mathbf{1}=n\mathbf{1}\) が成り立つので、 \(B(t)\mathbf{1}=(1+(n-1)t)\mathbf{1}\) となり、固有値 \(\lambda_1=1+(n-1)t\) を得る。一方、\(\mathbf{1}\) に直交する任意のベクトル \(x\) については \(J_n x=0\) であるから、 \(B(t)x=(1-t)x\) となる。この固有値は次元 \(n-1\) の部分空間に対応するため、 \(\lambda_2=1-t\) は重複度 \(n-1\) をもつ。

(b) 固有値の結果より、\(t\neq 1\) かつ \(t\neq -(n-1)^{-1}\) のとき、すべての固有値が \(0\) でないので \(B(t)\) は正則である。逆行列の候補として

(1-t)^{-1}\left(I_n-\frac{t}{1+(n-1)t}J_n\right)

を考える。\(J_n^2=nJ_n\) を用いて直接積を計算すると、 \(B(t)\) との積が \(I_n\) に等しいことが確認できる。したがって、

B(t)^{-1}=(1-t)^{-1}\left(I_n-\frac{t}{1+(n-1)t}J_n\right)

が \(B(t)\) の逆行列である。


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