1.3.P14
1.3.問題14
\( A \in M_n \) が対角化可能であるとする。
(a) \( A \) の階数が、その非零固有値の個数に等しいことを証明せよ。
(b) \( \mathrm{rank}\,A = \mathrm{rank}\,A^k \) が \( k = 1, 2, \ldots \) のすべてについて成り立つことを証明せよ。
(c) \( A \) が零因子行列(冪零行列)であることと、\( A = 0 \) であることが同値であることを証明せよ。
(d) \( \mathrm{tr}\,A = 0 \) ならば、\( \mathrm{rank}\,A \neq 1 \) であることを証明せよ。
(e) 上記 (a)〜(d) の結果を用いて、
B = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}
が対角化可能でないことを示せ。
ヒント
対角化可能であることから、行列は固有値を対角成分にもつ対角行列に相似であると考える。
階数、冪、トレースは相似変換で不変であるため、対角行列に対して直接確認すればよい。
零因子行列や階数 1 の場合は、固有値の配置に着目する。
解答例
\( A \in M_n \) が対角化可能であるとする。このとき、ある正則行列 \( P \) が存在して
P^{-1} A P = \mathrm{diag}(\lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n)
と表される。以下では、この対角行列について性質を確認する。
(a) 対角行列の階数は、対角成分のうち零でないものの個数に等しい。したがって \( \mathrm{rank}\,A \) は \( \lambda_i \neq 0 \) である固有値の個数に等しい。
(b) 任意の正の整数 \( k \) に対して
P^{-1} A^k P = \mathrm{diag}(\lambda_1^k,\lambda_2^k,\ldots,\lambda_n^k)
が成り立つ。\( \lambda_i \neq 0 \) ならば \( \lambda_i^k \neq 0 \) であり、\( \lambda_i = 0 \) ならば \( \lambda_i^k = 0 \) である。よって非零対角成分の個数は変わらず、 \( \mathrm{rank}\,A = \mathrm{rank}\,A^k \) がすべての \( k \) について成り立つ。
(c) \( A \) が冪零行列であるとは、ある \( m \) に対して \( A^m = 0 \) となることである。(b) より \( \mathrm{rank}\,A = \mathrm{rank}\,A^m \) であるが、右辺は零行列の階数であるから 0 である。したがって \( \mathrm{rank}\,A = 0 \) となり、\( A = 0 \) である。逆は自明である。
(d) \( \mathrm{tr}\,A = 0 \) とする。トレースは固有値の和であるから \( \lambda_1 + \cdots + \lambda_n = 0 \) である。もし \( \mathrm{rank}\,A = 1 \) ならば、(a) より非零固有値はただ一つであり、それを \( \lambda \neq 0 \) とすると \( \mathrm{tr}\,A = \lambda \neq 0 \) となり矛盾する。よって \( \mathrm{rank}\,A \neq 1 \) である。
(e) 行列 \( B = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \) について考える。直接計算より \( B^2 = 0 \) であるから、\( B \) は冪零行列である。一方 \( B \neq 0 \) である。これは (c) の結果に反するため、\( B \) は対角化可能ではない。
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