1.2.問題11
1.2.P11
\( V \) を体 \( F \) 上のベクトル空間とする。線形変換 \( T : V \to V \) の固有値とは、\( T\mathbf{v} = \lambda \mathbf{v} \) を満たす非零ベクトル \( \mathbf{v} \in V \) が存在するようなスカラー \( \lambda \in F \) のことである。
特に \( F = \mathbb{C} \) であり、かつ \( V \) が有限次元である場合、任意の線形変換 \( T : V \to V \) は少なくとも1つの固有値をもつことを示せ。
ヒント
有限次元のとき、\( T \) の行列表示をとると、その固有値は特性多項式
p_T(t) = \det(tI - [T])
の根である。\( F = \mathbb{C} \) では代数学の基本定理により、この多項式は少なくとも1つの複素根をもつため、その根が固有値となる。
また、次の例により仮定を緩めると固有値が存在しない場合があることを示せる。
例1(無限次元の場合)
\( V = \mathbb{R}[x] \)(実係数多項式全体の空間)上で、\( (Tf)(x) = f'(x) \) と定める。このとき \( T \) は固有値をもたない。
例2(\( F \neq \mathbb{C} \) の場合)
\( F = \mathbb{R} \)、\( V = \mathbb{R}^2 \) とし、
T = \begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}
と定めると、この行列は固有値を持たない(固有値は \( \pm i \) であり、これは \(\mathbb{R}\) に含まれない)。
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