[行列解析1.2.P1]行列式と零固有値の同値性の確認

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.2.P1

1.2.問題1

定義 1.2.14. 複素数 \(\lambda_1, \ldots, \lambda_n\) に対して、\(k \leq n\) のとき、その第 \(k\) 次初等対称関数(elementary symmetric function)は次で定義されます。

 S_k(\lambda_1, \ldots, \lambda_n) = \sum_{1 \leq i_1 < \cdots < i_k \leq n} \ \prod_{j=1}^k \lambda_{i_j} 

この和は \(\binom{n}{k}\) 個の項を持ちます。

定義 1.2.10. \( E_k(A) \)

\( A \in M_n \) とする。

サイズ \( k \) の主小行列式の総和(その数は \(\binom{n}{k}\) 個ある)を
\( E_k(A) \) で表す。

観察1.1.7.

行列 \( A \in M_n \) は特異行列であることと、\( 0 \in \sigma(A) \) であることは同値である。

\(A \in M_n\) とする。

恒等式 \(S_n(A) = E_n(A)\) を用いて、観察1.1.7 を検証せよ。

ヒント

行列 \( A \) の固有値を \( \lambda_1,\ldots,\lambda_n \) とするとき、特性多項式の定数項は \( (-1)^n S_n(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) \) で与えられる。

一方、定義より \( E_n(A) \) は \( \det A \) に等しい。これらを結び付けて考える。

解答例

\( A \in M_n \) とし、その固有値を重複度込みで \( \lambda_1,\lambda_2,\ldots,\lambda_n \) とする。このとき、定義 1.2.14 より第 \( n \) 次初等対称関数は

S_n(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)
=
\prod_{j=1}^n \lambda_j

である。

一方、定義 1.2.10 より \( E_n(A) \) はサイズ \( n \) の主小行列式の総和であるが、サイズ \( n \) の主小行列式は行列 \( A \) 自身の行列式のみであるから \( E_n(A)=\det A \) である。

仮定より恒等式 \( S_n(A)=E_n(A) \) が成り立つので、

\prod_{j=1}^n \lambda_j
=
\det A

を得る。

ここで \( A \) が特異行列であることは \( \det A = 0 \) であることと同値である。一方、 \( \prod_{j=1}^n \lambda_j = 0 \) であることは、ある \( j \) に対して \( \lambda_j = 0 \) が成り立つこと、すなわち \( 0 \in \sigma(A) \) であることと同値である。

以上より、行列 \( A \) が特異行列であることと、 \( 0 \in \sigma(A) \) であることは同値であることが、恒等式 \( S_n(A)=E_n(A) \) を用いて確認された。


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