[行列解析1.1.P2]行和と固有値1の同値性

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.1.P2

1.1.問題2

\( A \in M_n \) を与える。

(a) 各行の要素の和が1であることは、\( 1 \in \sigma(A) \) かつベクトル \( e = [1, 1, \ldots, 1]^{\top} \) が対応する固有ベクトル、すなわち \( Ae = e \) であることと同値であることを示せ。

(b) 各行の要素の和が1であるとする。もし \( A \) が正則ならば、\( A^{-1} \) の各行の要素の和も1であることを示せ。
さらに任意の多項式 \( p(t) \) に対して、\( p(A) \) の各行の要素の和が等しいことを示せ。それらの和は何に等しいか?

ヒント

各行の和は行列をベクトル \( e \) に作用させた結果として表される。

正則性があるときは逆行列を用い、さらに多項式の場合は線形結合として考えるとよい。

解答例

(a) 各行の要素の和が1であるとは、行列 \(A\) を \( e = [1,1,\ldots,1]^{\top} \) に作用させたとき、各成分が1になることを意味する。すなわち \( Ae = e \) が成り立つことである。

このとき、固有値の定義より \( e \neq 0 \) であるから、\( Ae = 1 \cdot e \) は \(1 \in \sigma(A)\) であり、\(e\) が対応する固有ベクトルであることを意味する。

逆に、\( 1 \in \sigma(A) \) で、対応する固有ベクトルが \( e \) である、すなわち \( Ae = e \) が成り立つと仮定する。このとき、\(Ae\) の第 \(i\) 成分は第 \(i\) 行の要素の和であるから、各行の和はすべて1である。

(b) 各行の要素の和が1であると仮定する。このとき (a) より \( Ae = e \) が成り立つ。さらに \(A\) は正則であるから、両辺に左から \(A^{-1}\) を掛けると \( A^{-1}Ae = A^{-1}e \) となる。

左辺は \(e\) に等しいので、 \( A^{-1}e = e \) が従う。よって、(a) と同様の議論から、\(A^{-1}\) の各行の要素の和も1である。

さらに任意の多項式 \( p(t) = a_0 + a_1 t + \cdots + a_k t^k \) を考える。\( Ae = e \) であるから、帰納法により \( A^m e = e \) がすべての自然数 \(m\) に対して成り立つ。

したがって \( p(A)e = (a_0 + a_1 + \cdots + a_k)e = p(1)e \) が成り立つ。

よって、\( p(A) \) の各行の要素の和はすべて等しく、その値は \( p(1) \) に等しい


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