(2.7.P2)
2.7.問題2
前問には興味深い逆が存在する。すなわち \( A \in M_{m,n} \) が縮小写像であり、その特異値のうちちょうど \(\nu\) 個が 1 より小さいと仮定する。
このとき、行列 \( B, C, D \) が存在して、
U = \begin{bmatrix} D & B \\ C & A \end{bmatrix} \in M_{\max\{m,n\} + |m-n| + \nu}
がユニタリとなることをCS分解を用いて示せ。このような行列 \( U \) を、縮小写像 \( A \) のユニタリ拡大 (unitary dilation) という。
ヒント
\(A\) が縮小写像であるとは、すべての特異値が 1 以下であることを意味する。 特異値分解により \(A = U_1 \Sigma V_1^*\) と書く。
特異値のうちちょうど \(\nu\) 個が 1 より小さいとすると、 \(\Sigma\) は \(\cos \theta_i\) (\(0<\theta_i\le \frac{\pi}{2}\))の形で表せる部分を \(\nu\) 個もつ。 CS分解を用いて \(\sin \theta_i\) を補うブロックを作れば、全体をユニタリに拡張できる。
解答例
\(A \in M_{m,n}\) を縮小写像とする。 したがってその特異値はすべて 1 以下である。 特異値分解より
A = U_1 \Sigma V_1^*
と書ける。 ここで \(\Sigma = \mathrm{diag}(\sigma_1,\ldots,\sigma_r)\) (\(r=\min\{m,n\}\))であり、 \(\sigma_i \le 1\) である。
仮定より、ちょうど \(\nu\) 個の特異値が 1 より小さい。 それらに対して \(\sigma_i = \cos \theta_i\) (\(0<\theta_i\le \frac{\pi}{2}\))と書くことができる。 残りの特異値は 1 である。
そこで \(\sin \theta_i\) を対角成分にもつ行列 \(S = \mathrm{diag}(\sin \theta_1,\ldots,\sin \theta_\nu)\) を考える。
CS分解の構成に従えば、
\begin{pmatrix}
\cos \theta_i & -\sin \theta_i \\
\sin \theta_i & \cos \theta_i
\end{pmatrix}
は 2 次のユニタリ行列である。 これを各 \(\theta_i\) について直和すれば、 不足している \(\nu\) 次元を補って 全体をユニタリにできる。
具体的には、適当な行列 \(B, C, D\) を選ぶことにより、
U =
\begin{bmatrix}
D & B \\
C & A
\end{bmatrix}
がユニタリとなるように構成できる。
次元は、不足分 \(|m-n|\) と、 特異値が 1 未満である個数 \(\nu\) を補うため、
\max\{m,n\} + |m-n| + \nu
となる。
このようにして得られるユニタリ行列 \(U\) を、 縮小写像 \(A\) のユニタリ拡大(unitary dilation)という。
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