[行列解析2.6.p40]ユニタリ合同とブロック特異値

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.6.P40

2.6.問題40

定理(2.4.5.1) の表記を用い、\(T\) と \(T'\) がユニタリ合同であるとする。

(a) 各 \(i,j = 1, \ldots, d\) に対して、\(T_{ij}\) と \(T'_{ij}\) の特異値が同じである必要がある理由を説明せよ。

(b) \(n = 2\) の場合、この必要条件は何を意味するか。

また、なぜこの場合に必要かつ十分であるか。

(c) \(n = 4\)、\(d = 2\) とし、例として

T_{11} = T'_{11} = 
\begin{pmatrix}1 & 1 \\ 0 & 1\end{pmatrix}、\\
T_{22} = T'_{22} = \begin{pmatrix}2 & 2 \\ 0 & 2\end{pmatrix}、\\
T_{12} = \begin{pmatrix}3 & 0 \\ 0 & 4\end{pmatrix}、\\
T'_{11} = \begin{pmatrix}0 & 4 \\ 3 & 0\end{pmatrix}

とする。

この場合、(a) の必要条件が十分条件でない理由を説明せよ。

ヒント

ユニタリ合同とは、あるユニタリ行列 \(U\) によって \(T' = U^* T U\) と書けることである。 ブロック分解された形で考えると、各成分は \(T'_{ij} = U_i^* T_{ij} U_j\) の形になる。

ユニタリ行列による左右からの積は特異値を変えないことを用いる。 また \(n=2\) の場合には、行列は 1 次元ブロックとなる。

解答例

(a) \(T\) と \(T'\) がユニタリ合同であるとは、あるユニタリ行列 \(U\) が存在して

T' = U^* T U

と書けることである。 (2.4.5.1) のブロック表示に従って \(U\) も同じ分割に従うとすると、 各成分は

T'_{ij} = U_i^* T_{ij} U_j

と表される。

ユニタリ行列による左右からの乗法は特異値を変えない。 すなわち任意の行列 \(X\) に対して \(U_i^* X U_j\) は \(X\) と同じ特異値をもつ。

したがって各 \(i,j\) に対し、 \(T_{ij}\) と \(T'_{ij}\) の特異値は一致しなければならない。 これが必要条件である。

(b) \(n=2\) の場合、各ブロックは 1 次元となり、 各 \(T_{ij}\) は単なる複素数である。 複素数の特異値はその絶対値に等しい。

したがって必要条件は

|T_{ij}| = |T'_{ij}|

がすべての \(i,j\) で成り立つことである。

1 次元の場合、ユニタリ行列は絶対値 1 の複素数である。 したがって適当な位相因子を掛けることにより、 絶対値が等しい複素数同士は必ず一致させることができる。

よって \(n=2\) の場合、この条件は必要かつ十分である。

(c) \(n=4\)、\(d=2\) の場合、各ブロックは 2 次正方行列である。 与えられた例では \(T_{12}\) と対応する \(T'_{12}\) は同じ特異値をもつように選ばれている。

しかし特異値が一致しても、2 次行列の場合には ユニタリ行列 \(U_1, U_2\) を同時に選んで

T'_{12} = U_1^* T_{12} U_2

を満たすとは限らない。

実際、特異値は行列の「大きさ」に関する情報しか与えず、 特異ベクトルの相対的な位置関係までは決めない。 ブロック全体としては同じ \(U_1, U_2\) を 他のブロックにも同時に用いなければならないため、 個々のブロックで特異値が一致しても、 全体としてユニタリ合同になるとは限らない。

したがって (a) の条件は一般には必要条件にとどまり、 十分条件ではない。


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