[行列解析2.6.p15]固有値と特異値の関係と正規性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.6.P15

2.6.問題15

\(A = [a_{ij}] \in M_n\) の固有値を \(|\lambda_1| \ge \cdots \ge |\lambda_n|\) の順に、特異値を \(\sigma_1 \ge \cdots \ge \sigma_n\) の順に並べる。

(a) 下記等式を示せ。

\sum_{i,j=1}^{n} |a_{ij}|^2 = \mathrm{tr}(A^* A) = \sum_{i=1}^{n} \sigma_i^2

(b) 下記不等式を示せ。

\sum_{i=1}^{n} |\lambda_i|^2 \le \sum_{i=1}^{n} \sigma_i^2

等号成立は \(A\) が正規である場合に限る(シュールの不等式)。

(c) \(\sigma_i = |\lambda_i|\) が全ての \(i = 1, \ldots, n\) で成り立つことと \(A\) が正規であることは同値である。

(d) \(|a_{ii}| = \sigma_i\) が全ての \(i\) で成り立つ場合、\(A\) は対角行列。

(e) \(A\) が正規で \(|a_{ii}| = |\lambda_i|\) が全ての \(i\) で成り立つ場合、\(A\) は対角行列である。

ヒント

(a) ではフロベニウスノルムとトレースの関係 \( \mathrm{tr}(A^*A) \) を用いる。特異値は \(A^*A\) の固有値の平方根であることを思い出すとよい。

(b) はシュール分解 \( A = UTU^* \) を用いて、上三角行列の対角成分が固有値であることと、(a) の結果を組み合わせる。

(c) は (b) の等号成立条件を詳しく見ることで示せる。正規行列では特異値は固有値の絶対値に一致する。

(d)(e) はフロベニウスノルムの等号成立条件や、正規行列のスペクトル分解を利用する。

解答例

(a) まず

\mathrm{tr}(A^*A)
= \sum_{i=1}^n (A^*A)_{ii}
= \sum_{i,j=1}^n \overline{a_{ji}} a_{ji}
= \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2

となる。一方、特異値分解 \( A = U\Sigma V^* \) を用いると

A^*A = V \Sigma^2 V^*

であるから、\(A^*A\) の固有値は \( \sigma_i^2 \) である。したがって

\mathrm{tr}(A^*A)
= \sum_{i=1}^n \sigma_i^2

が成り立つ。

(b) シュール分解により、あるユニタリ行列 \(U\) が存在して

A = U T U^*

と書ける。ここで \(T\) は上三角行列で、その対角成分は固有値 \( \lambda_i \) である。すると

\sum_{i=1}^n |\lambda_i|^2
= \sum_{i=1}^n |t_{ii}|^2
\le \sum_{i,j=1}^n |t_{ij}|^2
= \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2
= \sum_{i=1}^n \sigma_i^2

となる。等号成立は \(T\) が対角行列、すなわち \(A\) が正規である場合に限る。

(c) もし \( \sigma_i = |\lambda_i| \) がすべての \(i\) で成り立つならば、(b) の不等式で等号が成立するので \(A\) は正規である。逆に \(A\) が正規であればスペクトル分解 \( A = U \Lambda U^* \) が存在し、特異値は固有値の絶対値に一致する。よって両者は同値である。

(d) もし \( |a_{ii}| = \sigma_i \) がすべての \(i\) で成り立つとする。(a) より

\sum_{i=1}^n \sigma_i^2
= \sum_{i,j=1}^n |a_{ij}|^2

であるが、仮定より

\sum_{i=1}^n |a_{ii}|^2
= \sum_{i=1}^n \sigma_i^2

となる。したがって非対角成分はすべて 0 であり、\(A\) は対角行列である。

(e) \(A\) が正規ならばユニタリ行列 \(U\) により対角化できる。さらに \( |a_{ii}| = |\lambda_i| \) が成り立つと仮定すると、(d) と同様にフロベニウスノルムの等号成立から非対角成分は 0 である。したがって \(A\) は標準基底に関してすでに対角行列である。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました