[行列解析2.5.P9]正規性とエルミート分解の固有ベクトル

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P9

2.5.問題9

\(A \in M_n\) を \(A = H(A) + i\,K(A)\)(\(H(A), K(A)\) はエルミート)と表す。

もし \(H(A)\) のあらゆる固有ベクトルが \(K(A)\) の固有ベクトルでもあるなら、\(A\) は正規であることを示せ。

逆はどうか。次の \(A\) を考えよ。

 A = \begin{bmatrix} 1 & i \\ -i & 1 \end{bmatrix}. 

ヒント

前問と同様に \( A = H(A) + iK(A) \) を用いる。

エルミート行列はユニタリ対角化可能であり、共通の固有ベクトルをもつことは可換性と密接に関係する点に注意する。

解答例

\( A = H(A) + iK(A) \) とし、\( H(A), K(A) \) はともにエルミートであるとする。
仮定より、\( H(A) \) の任意の固有ベクトルは \( K(A) \) の固有ベクトルでもある。

エルミート行列 \( H(A) \) はユニタリ対角化可能であるから、あるユニタリ行列 \( U \) により \( U^{*}H(A)U \) は対角行列となる。
その固有ベクトル系が \( K(A) \) の固有ベクトル系でもあるという仮定から、 \( U^{*}K(A)U \) も同時に対角行列となる。

したがって \( H(A) \) と \( K(A) \) は同時に対角化可能であり、特に \( H(A)K(A) = K(A)H(A) \) が成り立つ。

前問の結果より、\( H(A) \) と \( K(A) \) が可換であることは \( A \) が正規であることと同値である。よって \( A \) は正規である。

次に逆について考える。

\( A \) が正規であっても、\( H(A) \) のすべての固有ベクトルが \( K(A) \) の固有ベクトルになるとは限らない。

実際に \( A = \begin{bmatrix} 1 & i \\ -i & 1 \end{bmatrix} \) を考えると、この行列は \( A^{*}A = AA^{*} \) を満たすので正規である。

しかしこのとき \( H(A) = \begin{bmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{bmatrix} \), \( K(A) = \begin{bmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{bmatrix} \) となり、\( H(A) \) は全てのベクトルを固有ベクトルにもつ一方で、\( K(A) \) の固有ベクトルはそれとは一致しない。

したがって逆は成り立たない。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました