[行列解析2.5.P76]0-1行列の正規性と行・列構造の特徴づけ

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.5.P76

2.5.問題76

\( A \in M_n(\mathbb{R}) \) の各成分が 0 または 1 であるとし、\( e \in \mathbb{R}^n \) を全ての成分が 1 のベクトル、\( J \in M_n(\mathbb{R}) \) を全ての成分が 1 の行列とする。

ここで \( A = [c_1 \ \cdots \ c_n] \)、\(A^{\top} = [r_1 \ \cdots \ r_n]\) と書く。

(a) \(Ae\) の成分が行和であると同時に、各行のユークリッドノルムの二乗である理由を説明せよ。同様に \(A^T e\) の成分も解釈せよ。

(b) \(A\) が正規であることと、\(Ae = A^{\top} e\) かつ 任意の \(i \neq j\) に対して

 c_i^{\top} c_j = r_i^{\top} r_j 

が成り立つことが同値であることを示せ。

(c) \(A\) が正規であることと、補行列 \(J - A\) が正規であることが同値であることを示せ。

ヒント

各成分が \(0\) または \(1\) であることを用いると、内積やノルムの計算が「個数の数え上げ」として解釈できる。

正規性 \(AA^{\top}=A^{\top}A\) は、行ベクトル同士と列ベクトル同士の内積構造を比較することで特徴づけられる。

解答例

(a) ベクトル \(e\) は全成分が \(1\) であるから、\(Ae\) の第 \(i\) 成分は \(A\) の第 \(i\) 行の成分和に等しい。

一方、第 \(i\) 行を \(r_i^{\top}\) とすると、そのユークリッドノルムの二乗は \(r_i^{\top} r_i\) である。

各成分が \(0\) または \(1\) であるため、これは第 \(i\) 行に含まれる \(1\) の個数、すなわち行和と一致する。

同様に、\(A^{\top}e\) の第 \(j\) 成分は第 \(j\) 列の成分和であり、列ベクトル \(c_j\) のノルムの二乗 \(c_j^{\top}c_j\) に等しい。

(b) \(A\) が正規であるとは \(AA^{\top}=A^{\top}A\) が成り立つことである。このとき対角成分を比較すると、すべての \(i\) について第 \(i\) 行のノルムの二乗と第 \(i\) 列のノルムの二乗が等しくなる。

これは (a) より \(Ae=A^{\top}e\) に対応する。また、非対角成分を比較すると、任意の \(i\neq j\) に対して

c_i^{\top}c_j = r_i^{\top}r_j

が得られる。逆に、これらの条件が成り立つとき、行同士と列同士の内積がすべて一致するため \(AA^{\top}=A^{\top}A\) が従い、\(A\) は正規である。

(c) 補行列 \(J-A\) の行ベクトルおよび列ベクトルは、それぞれ \(A\) の行・列から全成分 \(1\) のベクトルを引いたものである。

内積の双線形性より、行同士・列同士の内積の差は定数項によって同時に補正される。したがって、\(A\) に対して行内積と列内積が一致することと、\(J-A\) に対してそれらが一致することは同値である。

ゆえに、\(A\) が正規であることと \(J-A\) が正規であることは同値である。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました