[行列解析2.4.p22]異なる固有値をもつ行列のモーメント行列の性質

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.4.P22

2.4.問題22

\( A \in \mathbb{M}_n \) が異なる固有値を \( \mu_1, \ldots, \mu_d \)(重複度はそれぞれ \( \nu_1, \ldots, \nu_d \))を持つとする。モーメント行列の次数 \( m \) を

K_m = [\operatorname{tr} A^{i+j-2}]_{i,j=1}^m

とし、\( m=1,2,\ldots \)、かつ \( m \leq n \) の場合は前問題のモーメント行列 \( K \) の先頭主部分行列とする。ベクトルを

v^{(m)}_j = [1, \mu_j, \mu_j^2, \ldots, \mu_j^{m-1}]^T, \quad j=1,\ldots,d

と定め、行列

V_m = [v^{(m)}_1, \ldots, v^{(m)}_d]

を作る。また対角行列 \( D = \mathrm{diag}(\nu_1, \ldots, \nu_d) \in \mathbb{M}_d \) とする。

(1) \( m \leq d \) のとき \( V_m \) の行ランクは \( m \)、\( m \geq d \) のとき列ランクは \( d \) であることを示せ。

(2) \( K_m = V_m D V_m^{\top} \) であることを示せ。

(3) \( 1 \leq p < q \) のとき、\( K_p \) は \( K_q \) の先頭主部分行列であることを示せ。

(4) \( K_d \) は正則(非特異)であることを示せ。

(5) \( m \geq d \) のとき、\( \mathrm{rank} K_m = d \) であることを示せ。

(6) \( d = \max \{ m \geq 1 : K_m \text{ は正則} \} \) であるが、\( p < d \) のとき \( K_p \) が特異である場合もあることを示せ。

(7) \( K_d \) は正則で、\( K_{d+1}, \ldots, K_n, K_{n+1} \) はすべて特異であることを示せ。

(8) \( K_n = K \) は前問題のモーメント行列であることを示せ。

(9) \( \mathrm{rank} K \) は \( A \) の異なる固有値の個数に等しいことを示せ。

ヒント

行列 \( A \) のトレース \( \operatorname{tr} A^k \) は、固有値 \( \mu_1,\ldots,\mu_d \) を重複度込みで足し合わせたものである。

したがって \( \operatorname{tr} A^k = \sum_{j=1}^d \nu_j \mu_j^k \) と表せる。この表示を用いると、モーメント行列 \( K_m \) が、固有値から作ったベクトル行列 \( V_m \) と重複度を表す対角行列 \( D \) によって分解できることが分かる。

また、Vandermonde 型行列のランクの性質を利用する。

解答例

(1) まず \( V_m \) のランクを調べる。\( V_m \) の第 \( j \) 列は \( v^{(m)}_j = [1,\mu_j,\ldots,\mu_j^{m-1}]^{\top} \) である。固有値 \( \mu_1,\ldots,\mu_d \) は相異なるので、\( m \le d \) のとき、これらから作られる \( m \times d \) 行列は Vandermonde 型となり、行ベクトルが一次独立である。したがって行ランクは \( m \) である。一方、\( m \ge d \) のときは列ベクトルが一次独立となり、列ランクは \( d \) である。

(2) 次に \( K_m = V_m D V_m^{\top}\) を示す。定義より \( K_m \) の \( (i,j) \) 成分は \( \operatorname{tr} A^{i+j-2} \) である。固有値分解を用いると

\operatorname{tr} A^{i+j-2} = \sum_{k=1}^d \nu_k \mu_k^{\,i+j-2}

一方、\( V_m D V_m^{\top} \) の \( (i,j) \) 成分は

\sum_{k=1}^d \nu_k \mu_k^{\,i-1}\mu_k^{\,j-1}

となり、両者は一致する。よって \( K_m = V_m D V_m^{\top} \) が成り立つ。

(3) \( 1 \le p < q \) のとき、\( K_q \) の定義から明らかに、その左上 \( p \times p \) 部分は \( \operatorname{tr} A^{i+j-2} \)(\( i,j=1,\ldots,p \))で与えられ、これは \( K_p \) に等しい。したがって \( K_p \) は \( K_q \) の先頭主部分行列である。

(4) \( K_d \) の正則性を示す。\( m=d \) のとき、\( V_d \) は列ランク \( d \) をもつ正方行列であり、正則である。また \( D \) は正の整数 \( \nu_j \) を対角成分にもつので正則である。したがって \( K_d = V_d D V_d^{\top} \) は正則である。

(5) \( m \ge d \) のとき、前述のとおり \( V_m \) の列ランクは \( d \) である。よって積 \( V_m D V_m^{\top} \) のランクも \( d \) となり、\( \mathrm{rank} K_m = d \) が従う。

(6) 以上より、正則となる最大の次数は \( d \) であり \( d = \max \{ m \ge 1 : K_m \text{ は正則} \} \) が成り立つ。ただし、\( p < d \) であっても、固有値の配置によっては \( V_p \) の行が一次独立でなくなり、\( K_p \) が特異となる場合がある。

(7) \( K_d \) は正則である一方、\( m \ge d+1 \) では \( \mathrm{rank} K_m = d < m \) となるため、\( K_{d+1},\ldots,K_n,K_{n+1} \) はすべて特異である。

(8) 定義より \( m=n \) の場合の \( K_n \) は前問題で定義されたモーメント行列 \( K \) に一致する。

(9) したがって \( \mathrm{rank} K = d \) であり、これは行列 \( A \) の異なる固有値の個数に等しい。


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