[行列解析2.3.p8]複素直交行列の固有値と上三角化不能性

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.3.P8

2.3.問題8

\( Q \in M_n \) が複素直交行列であり、\( x \in \mathbb{C}^n \) が固有値 \( \lambda \neq \pm1 \) に対応する固有ベクトルであるとする。このとき、
\( x^{\top} x = 0 \) を示せ。

(2.1.P8a)
A(t) = (\cosh t) I + i (\sinh t) S \\
=\begin{bmatrix}
(\cosh t) & i(\sinh t)\\
-i(\sinh t) & (\cosh t)
\end{bmatrix}

2×2の複素直交行列で固有値が ±1 でない例は (2.1.P8a) を参照。
このような行列は、いずれも複素直交相似によって上三角化できないことを示せ。

ヒント

複素直交行列 \(Q\) は \(Q^{\top} Q = I\) を満たす行列である。

この性質を用いて、固有方程式 \(Qx=\lambda x\) を代入し、\(x^{\top} x\) を変形するとよい。

特に \((Qx)^{\top}(Qx)\) を二通りに評価して比較すると、\((\lambda^2-1)x^{\top} x=0\) が従う。

これより \(\lambda\neq \pm 1\) の場合に \(x^{\top} x=0\) が必要になる。

さらに、複素直交行列がもし複素直交相似で上三角行列にできると仮定すると、その対角成分は必ず \(\pm 1\) になることを用いる。

この事実と固有値保存性から矛盾を導く。

解答例

まず \(Q\) は複素直交行列であるから \(Q^{\top} Q = I\) が成り立つ。ここで \(Q\) の固有値 \(\lambda\neq \pm 1\) に対応する固有ベクトルを \(x\) とする。すなわち \(Qx=\lambda x\) が成立する。このとき次の等式を考える。

x^{\top} x
= x^{\top} Q^{\top} Q x
= (Qx)^{\top} (Qx)
= (\lambda x)^{\top} (\lambda x)
= \lambda^2 x^{\top} x

したがって、

(\lambda^2-1)x^{\top} x = 0

が得られる。ここで仮定より \(\lambda \neq \pm 1\) であるから \(\lambda^2-1 \neq 0\) である。よって上式から

x^{\top} x = 0

が従う。したがって主張の前半は示された。

次に、このような行列がいずれも複素直交相似によって上三角化できないことを示す。背理法で、複素直交行列 \(Q\) が複素直交行列 \(S\) により上三角行列 \(T\) に変換されると仮定する:

T = S^{-1} Q S, \quad S^{\top} S = I

このとき \(T\) も複素直交行列であるから \(T^{\top} T = I\) が成立する。\(T\) が上三角であることを用いると、対角成分 \(t_{ii}\) について

t_{ii}^2 = 1 \quad (1 \le i \le n)

が従い、したがって対角成分はすべて \(\pm 1\) である。上三角行列の固有値は対角成分であるから、\(T\) の固有値はすべて \(\pm 1\) になる。

一方、相似変換は固有値を保存するので、\(Q\) の固有値もすべて \(\pm 1\) でなければならない。しかし最初の仮定より \(Q\) は \(\lambda \neq \pm 1\) を固有値としてもっている。これは矛盾である。

したがって、\(\lambda \neq \pm 1\) の固有値をもつ複素直交行列はいずれも複素直交相似によって上三角化することはできない。以上で示された。


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