[行列解析2.2.p3]2×2複素行列はその転置とユニタリ相似であるか

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.2.P3

2.2.問題3

\( A \in M_2 \) とする。

(a) (2.2.8b) にある3つの単語(Word) \(W\) に対して、次を示せ:

\mathrm{tr}\, W(A, A^*) = \mathrm{tr}\, W(A^T \overline{A})

(b) 任意の2×2複素行列はその転置行列とユニタリ相似であることを示せ。

ヒント

ポイントはトレースの性質を用いることである。

トレースは転置に対して不変であり、また積の循環置換に対して不変である。

さらに \(A^{*}=\overline{A}^{T}\) であることを利用する。

まず与えられた単語(Word) \(W\) に対してトレースが一致することを示し、その後これらのトレース不変量が一致することから、2×2複素行列が転置行列とユニタリ相似であることを結論づける。

解答例

(a) まずトレースの基本性質を確認する。任意の正方行列 \(X\) に対して \( \mathrm{tr}(X^{T})=\mathrm{tr}(X) \) が成り立つ。また適当なサイズの行列 \(X,Y\) に対して \( \mathrm{tr}(XY)=\mathrm{tr}(YX) \) が成り立ち、これを拡張すると積における循環置換に関しても不変である。

ここで \(A^{*}=\overline{A}^{T}\) であることに注意する。単語(Word) \(W\) は \(A\) と \(A^{*}\) の積からなる有限積であるから、その転置を取ると各因子の順序が逆転し、それぞれ転置される。したがって

W(A,A^{*})^{T}=W(A^{T},\overline{A})

が成り立つ。ここでトレースの転置不変性より

\mathrm{tr}\,W(A,A^{*})
=\mathrm{tr}\,\left(W(A,A^{*})^{T}\right)
=\mathrm{tr}\,W(A^{T},\overline{A})

となる。したがって (2.2.8b) に挙げられた3つの単語(Word) \(W\) それぞれについて \( \mathrm{tr}\,W(A,A^{*})=\mathrm{tr}\,W(A^{T}\overline{A}) \) が示されたことになる。

(b) 2×2複素行列に関しては、有限個のトレース不変量が一致することがユニタリ相似性の判定条件になる。すなわち、(2.2.8b) に挙げられた3つの単語(Word) \(W\) に対して

\mathrm{tr}\,W(A,A^{*})=\mathrm{tr}\,W(B,B^{*})

がすべて成立すれば、2×2複素行列 \(A\) と \(B\) はユニタリ相似である。

(a) より、行列 \(A\) とその転置 \(A^{T}\) に対して、これら3つの単語(Word)に関するトレース不変量が一致することが分かった。したがって上の判定条件を \(B=A^{T}\) として適用すれば、

A \sim_{u} A^{T}

すなわち \(A\) と \(A^{T}\) はユニタリ相似であることが従う。

以上より、(a) で示したトレース等式とユニタリ相似の判定定理を組み合わせることで、任意の2×2複素行列はその転置行列とユニタリ相似であることが示された。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました