2.1.p27
2.1.問題27
自然数 \( n \geq 2 \) とベクトル \( x = [x_i] \in \mathbb{R}^n \) を考える。
\( x_n = x_{n-1} = 0 \) ならば \(\theta_1 = 0\) とする。
そうでなければ、\(\theta_1 \in [0, 2\pi)\) を次の条件で選ぶ:
\cos \theta_1 = \frac{x_{n-1}}{\sqrt{x_n^2 + x_{n-1}^2}},\\
\sin \theta_1 = -\frac{x_n}{\sqrt{x_n^2 + x_{n-1}^2}}
このとき、ベクトル
x^{(1)} = U(\theta_1; n-1, n) x
について、成分 \( x^{(1)}_n = 0 \) かつ
\( x^{(1)}_{n-1} \geq 0 \) となることを示せ。
さらに、
x^{(2)} = U(\theta_2; n-2, n-1) U(\theta_1; n-1, n) x
があり、\(\theta_2\) をどのように選べば \( x^{(2)}_n = x^{(2)}_{n-1} = 0 \) かつ \( x^{(2)}_{n-2} \geq 0 \) となるかを説明せよ。
一般に、\(1 \leq k < n\) であるとき、平面回転の列 \( U_1, \ldots, U_k \) を構成し、
x^{(k)} = U_k \cdots U_1 x
が成分 \( x^{(k)}_n = \cdots = x^{(k)}_{n-k+1} = 0 \) かつ \( x^{(k)}_{n-k} \geq 0 \) を満たすようにできる理由を説明せよ。
また、なぜノルムの保存 (|x|_2 = |x^{(k)}|_2) が成り立つかも説明せよ。
ヒント
与えられた \(U(\theta;i,j)\) は \(i\) 成分と \(j\) 成分の成す2次元平面での回転を表す行列である。
この回転を用いて2つの成分から一方を零にできる。
成分の大きさに応じて \(\cos \theta\) と \(\sin \theta\) を選ぶことで希望する符号条件を満たすことができる。
また、回転は直交変換であるためユークリッドノルムを保存する。
解答例
まず (a) の最初の作業として、成分 \(x_{n-1}\) と \(x_n\) のみを含む2次元部分空間で回転を行う。
仮定より
x^{(1)} = U(\theta_1;n-1,n)x
が定義されている。ここで \(\theta_1\) は条件
\cos\theta_1=\frac{x_{n-1}}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}} \\
\quad
\sin\theta_1=-\frac{x_n}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}}
を満たすように選ばれている。
このとき回転の作用は
\begin{pmatrix}
x^{(1)}_{n-1} \\
x^{(1)}_{n}
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\cos\theta_1 & -\sin\theta_1 \\
\sin\theta_1 & \cos\theta_1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
x_{n-1} \\
x_n
\end{pmatrix}
となる。
右辺を代入計算すると
x^{(1)}_{n}
=\sin\theta_1 x_{n-1}+\cos\theta_1 x_n
=0
が成り立ち、さらに
x^{(1)}_{n-1}
=\cos\theta_1 x_{n-1}-\sin\theta_1 x_n
=\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}\ge 0
となる。よって条件 \(x^{(1)}_n=0\) かつ \(x^{(1)}_{n-1}\ge 0\) が満たされる。
次に
x^{(2)}=U(\theta_2;n-2,n-1)U(\theta_1;n-1,n)x
を考える。既に \(x^{(1)}_n=0\) なので、いまは成分 \(x^{(1)}_{n-1}\) と \(x^{(1)}_{n-2}\) に着目し、それらに作用する回転を作る。同様に
\cos\theta_2=\frac{x^{(1)}_{n-2}}{\sqrt{(x^{(1)}_{n-2})^2+(x^{(1)}_{n-1})^2}}
\\
\sin\theta_2=-\frac{x^{(1)}_{n-1}}{\sqrt{(x^{(1)}_{n-2})^2+(x^{(1)}_{n-1})^2}}
と選ぶことで
x^{(2)}_{n}=0,\quad x^{(2)}_{n-1}=0,\quad x^{(2)}_{n-2}\ge 0
が成立する。
一般の場合も同様である。\(1\le k<n\) に対し、連続する2成分のみに作用する回転 \(U_1,\ldots,U_k\) を順に構成する。各段階で
x^{(j)} = U_j x^{(j-1)}, \quad x^{(0)} = x
と定義すると、帰納法により
x^{(k)}_n=\cdots =x^{(k)}_{n-k+1}=0,\quad x^{(k)}_{n-k}\ge 0
が得られる。
最後にノルム保存について述べる。各 \(U(\theta;i,j)\) は直交(あるいはユニタリ)行列であり、
U^T U = I \quad (\text{または } U^*U=I)
が成り立つ。そのためユークリッドノルムは
\|x^{(k)}\|_2=\|U_k\cdots U_1x\|_2=\|x\|_2
となり、ノルムが保存される。したがって、Givens回転の列により目的の零化とノルム保存が同時に実現される。
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