2.1.p26
2.1.問題26
(a) 任意の行列 \( A \in M_n \) は、ハウスホルダー行列 \( H_1, \ldots, H_{n-1} \) と上三角行列 \( R \) を用いて、次のように分解できることを説明せよ:
A = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} R
(b) 任意のユニタリ行列 \( U \in M_n \) は、ハウスホルダー行列 \( H_1, \ldots, H_{n-1} \) と対角ユニタリ行列 \( D \) を用いて、次のように分解できることを説明せよ:
U = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} D
(c) 実直交行列 \( Q \in M_n(\mathbb{R}) \) は、実ハウスホルダー行列 \( H_1, \ldots, H_{n-1} \) と次のような対角行列 \( D \) を用いて分解できることを説明せよ:
Q = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} D \\
\quad \text{ただし} \quad
D = \mathrm{diag}(1, \ldots, 1, \pm 1) \\= \mathrm{diag}(1, \ldots, 1, (-1)^{n-1} \det Q)
ヒント
ハウスホルダー行列を用いることで、任意の行列やユニタリ行列、実直交行列を体系的に分解できることを説明する問題である。行列を逐次的に三角化する操作の考え方を利用する。
ハウスホルダー行列はベクトルを他のベクトルへ直交変換で写す反射行列である。
列ごとに零要素を作ることで上三角化を行うことができる。ユニタリ行列や直交行列の場合には、最後に残る行列が対角ユニタリ行列または符号のみからなる対角行列となる。
解答例
(a) 行列 \( A \in M_n \) に対して、その第1列の先頭成分以外をゼロにするハウスホルダー行列 \( H_1 \) を構成する。このとき \( H_1 \) はユニタリであり、\( H_1A \) の第1列の下側成分はすべてゼロになる。
同様にして、第2列以下についても、残りの部分行列に対してハウスホルダー行列 \( H_2, \ldots, H_{n-1} \) を逐次構成すると、最終的に上三角行列 \( R \) が得られる。したがって
A = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} R
が成り立つ。この分解は QR 分解の一つの構成方法になっている。
(b) \( U \) がユニタリ行列のとき、(a) と同様にハウスホルダー行列を用いて上三角行列 \( R \) を得ると、\( U=QR \) の形で \( Q \) はユニタリ、\( R \) は上三角ユニタリ行列となる。上三角ユニタリ行列は対角成分以外がゼロであることから対角ユニタリ行列 \( D \) となる。よって
U = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} D
が成立する。ここで \( D \) の対角成分は絶対値 1 の複素数である。
(c) \( Q \in M_n(\mathbb{R}) \) が実直交行列である場合も同様に、実ハウスホルダー行列のみを用いて分解できる。このとき得られる対角行列 \( D \) の成分は実数であり、直交性から各成分は \( \pm 1 \) となる。したがって
Q = H_1 H_2 \cdots H_{n-1} D
ただし
D = \mathrm{diag}(1,\ldots,1,\pm 1) = \mathrm{diag}(1,\ldots,1,(-1)^{\,n-1}\det Q)
である。この最後の式は、行列式が積に対して \( \det Q = \det D \) となることから得られる。
以上より、任意の行列、ユニタリ行列、実直交行列はいずれもハウスホルダー行列の積と簡単な対角行列の積として表すことができる。
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