2.1.p23
2.1.問題23
\( A \in M_n \) を QR 分解し、
\( A = QR \)、かつ列に分割して
\( A = [a_1 \dots a_n] \)、
\( Q = [q_1 \dots q_n] \)、
\( R = [r_1 \dots r_n] \)、さらに \( R = [r_{ij}] \) とする。
以下を説明せよ:
- \( |\det A| = \det R = r_{11} \cdots r_{nn} \)
- \( \|a_i\|_2 = \|r_i\|_2 \ge r_{ii} \)、かつ 等号が成立するのは \( a_i = r_{ii} q_i \) のときに限る。
このことから、Hadamardの不等式:
|\det A| \le \prod_{i=1}^{n} \|a_i\|_2
が導かれる。この時の、等号成立条件はなにか?:
ヒント
行列 \( A \) を QR 分解すると、直交行列 \( Q \) と上三角行列 \( R \) の積 \( A=QR \) と表される。直交行列 \( Q \) は \( Q^{T}Q=I \) を満たすので、体積の大きさを表す行列式の絶対値は 1 である。この性質を利用すると \(\det A\) と \(\det R\) の関係が得られる。また、列ベクトルのノルムについては、QR 分解の構造と直交性を利用して比較することができる。Hadamard の不等式は、これらを組み合わせることで導かれる。
解答例
まず、QR 分解 \( A=QR \) において、\( Q \) は直交行列であり \( Q^{T}Q=I \) を満たす。このとき行列式について次が成り立つ。
\det A=\det(QR)=\det Q\cdot \det R
直交行列 \( Q \) は \(\det Q=\pm 1\) を満たすので、絶対値を取ると次を得る。
|\det A|=|\det R|
さらに \( R \) は上三角行列であるから、その行列式は対角成分の積に等しい。
\det R=r_{11}\cdots r_{nn}
よって次が成立する。
|\det A|=\det R=r_{11}\cdots r_{nn}
次に列ベクトルについて考える。
列表記 \( A=[a_1 \dots a_n] \)、
\( Q=[q_1 \dots q_n] \)、
\( R=[r_1 \dots r_n] \) とする。
QR 分解の関係 \( A=QR \) より各列について
a_i=\sum_{j=1}^{i} r_{ji} q_j
が成り立つ。
ここで \( q_j \) は互いに直交し、かつ \(\|q_j\|_2=1\) である。
したがってピタゴラスの定理より次を得る。
\|a_i\|_2^2=\sum_{j=1}^{i} |r_{ji}|^2=\|r_i\|_2^2
特に対角成分について
\|a_i\|_2=\|r_i\|_2\ge r_{ii}
が成立する。等号 \( \|r_i\|_2=r_{ii} \) が成立するのは、上式において \( r_{ji}=0 \) (\( j<i \))すなわち非対角成分がすべて 0 のときに限る。この場合
a_i=r_{ii} q_i
が成り立つ。
以上をまとめると、次の Hadamard の不等式を得る。
|\det A| \le \prod_{i=1}^{n}\|a_i\|_2
等号成立条件を考える。上で見たように \( r_{ji}=0 \) (\( j<i \))がすべての \( i \) について成立するとき、すなわち \( R \) が対角行列のときに等号となる。このとき
a_i=r_{ii} q_i
アダマール不等式(Hadamard不等式)の幾何学的解釈
\(| \det A|\) は \(A\) の列ベクトルを辺に持つ \(n\) 次元平行 \(2n\) 面体の体積に等しい。この不等式は、すべての辺の長さを保ったときに体積が最大になるのは列ベクトルが互いに直交している場合であることを示している。その時の最大の体積は \(\|a_1\| \|a_2\| \cdots \|a_n\|\)に等しい。
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