2.1.P2
2.1.問題2
\(U \in M_n\) をユニタリ行列とし、\(\lambda\) を \(U\) の固有値とする。
このとき次を示せ。
(a) \(|\lambda| = 1\)。
(b) ベクトル \(x\) が \(\lambda\) に対応する \(U\) の右固有ベクトルであることと、
\(x\) が \(\lambda\) に対応する \(U\) の左固有ベクトルであることは同値である。
ヒント
右固有ベクトル、左固有ベクトルについては、(1.4.6)を参照。
解答例
\(U\in M_n\) をユニタリ行列(すなわち \(U^*U=I\))とし、
\(\lambda\) を \(U\) の固有値、\(x\neq0\) を対応する固有ベクトルとする。
以下で (a) と (b) を示す。
(a) \(|\lambda|=1\) を示す。
\|x\|^2 = \langle x,x\rangle = \langle Ux,Ux\rangle = \langle \lambda x,\lambda x\rangle = |\lambda|^2\langle x,x\rangle = |\lambda|^2\|x\|^2
上の等式で \(\|x\|^2>0\) だから両辺を割ると \(1=|\lambda|^2\) となり、したがって
\(|\lambda|=1\) である。
(b) 右固有ベクトルと左固有ベクトルが同値であることを示す。
ここで「右固有ベクトル」とは
\(U x=\lambda x\) を満たす非零列ベクトル \(x\) を指し、「左固有ベクトル」とは行ベクトル
\(v^*\) が \(v^*U=\lambda v^*\) を満たす非零列ベクトル \(v\) を指す。
まず \(x\) が右固有ベクトルであると仮定する。すなわち
Ux=\lambda x
両辺に随伴行列 \(U^*\) を作用させると、
U^*Ux = U^*(\lambda x) = \overline{\lambda}\,U^*x
しかし \(U^*U=I\) だから左辺は \(x\) であり、よって
x = \overline{\lambda}\,U^*x \quad\Longrightarrow\quad U^*x = \lambda^{-1}x
(a) で示したように \(|\lambda|=1\) なので
\(\lambda^{-1}=\overline{\lambda}\)。
従って \(U^*x=\overline{\lambda}x\) が成り立ち、両辺を随伴(共役転置)すると
x^*U = \lambda x^*
したがって列ベクトル \(x\) は対応する行ベクトル \(x^*\) を通じて
\(\lambda\) に対応する左固有ベクトルを与える。
逆に、もし \(x\) が左固有ベクトル(すなわち
\(x^*U=\lambda x^*\))であれば同様の議論を逆向きに行うことで
\(Ux=\lambda x\) を導ける。
したがって「\(x\) が \(\lambda\) に対応する右固有ベクトルであること」と
「\(x\) が \(\lambda\) に対応する左固有ベクトルであること」は同値である。
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