[行列解析2.1.p19]QR分解を用いた双対基底の一意性と性質

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.1.p19

2.1.問題19

\( X = [x_1 \dots x_m] \in M_{n,m} \)、\(\mathrm{rank}(X) = m\)、かつ QR分解 \( X = QR \) をもつとする。

\( Y = QR^{-∗} = [y_1 \dots y_m] \) と定義する:

  1. \( Y \) の列ベクトルは \( S = \mathrm{span}\{x_1, \dots, x_m\} \) の基底であり、\( Y^* X = I_m \) なので、\( y_i^* x_j = \delta_{ij} \)、\( y_i^* x_i = 1 \)。
    このとき、\( y_1, \dots, y_m \) は \( x_1, \dots, x_m \) の双対基底(reciprocal basis)である。
  2. 双対基底は一意であることを示せ。すなわち、\( Z \in M_{n,m} \) の列が \( S \) に属し、かつ \( Z^* X = I \) ならば、\( Z = Y \)。
  3. \( y_1, \dots, y_m \) の双対基底は \( x_1, \dots, x_m \) であることを示せ。
  4. \( n = m \) のとき、\( X^{-*} \) の列は \( \mathbb{C}^n \) の基底であり、それは \( x_1, \dots, x_n \) の双対基底であることを示せ。

ヒント

本問題では、満列ランクの行列 \( X \) の QR 分解を用いて構成されるベクトル族 \( y_1,\dots,y_m \) が、\( x_1,\dots,x_m \) の双対基底を与えること、一意性をもつこと、さらに正方行列の場合との関係を示す。

QR分解 \( X=QR \) において、\( Q \) は列直交行列であり、\( R \) は上三角行列である。

逆共役転置を利用して \( Y=QR^{-*} \) と定義すると、内積の計算から \( Y^{*}X=I_m \) が成り立つ。

双対基底の一意性は、この関係式を満たす行列の一意性から従う。

正方の場合 \( n=m \) では \( X^{-*}=(X^{-1})^{*} \) の列が自然な双対基底を与える。

双対基底(reciprocal basis)の定義

内積空間において、線形独立なベクトル族 \( x_1,\dots,x_m \) を考える。このとき、ベクトル族 \( y_1,\dots,y_m \) が \( x_1,\dots,x_m \) の双対基底(reciprocal basis)であるとは、次の条件を満たすことである。

y_i^{*}x_j=\delta_{ij}\qquad (1\le i,j\le m)

ここで \( y_i^{*} \) は共役転置に対応する内積、\( \delta_{ij} \) はクロネッカーのデルタであり、\( i=j \) のとき \(1\)、それ以外のとき \(0\) である。この関係式により、各 \( y_i \) は対応する \( x_i \) に対してのみ 1 を与え、それ以外の \( x_j \) に対しては 0 を与えるベクトルである。

したがって、双対基底とは、与えられた基底 \( x_1,\dots,x_m \) を内積によって識別する役割をもつ基底であるといえる。

解答例

まず、\( X=[x_1\,\dots\,x_m]\in M_{n,m} \) とし、\(\operatorname{rank}(X)=m\) であるから、列ベクトル \( x_1,\dots,x_m \) は \( \mathbb{C}^n \) の部分空間

S=\operatorname{span}\{x_1,\dots,x_m\}

の基底である。QR分解より \( X=QR \) と書け、ここで \( Q\in M_{n,m} \) は列直交、すなわち \( Q^{*}Q=I_m \)、\( R\in M_m \) は可逆な上三角行列である。

\( Y \) を

Y=QR^{-*}

と定義する。ただし \( R^{-*}=(R^{-1})^{*} \) である。このとき

Y^{*}X=(QR^{-*})^{*}(QR)=R^{-1}Q^{*}QR=R^{-1}R=I_m

が成り立つ。

したがって、列ベクトルを \( Y=[y_1\,\dots\,y_m] \)、\( X=[x_1\,\dots\,x_m] \) と書けば、成分ごとに

y_i^{*}x_j=\delta_{ij},\qquad 1\le i,j\le m

が成立する。

特に \( y_i^{*}x_i=1 \) である。また \( Y \) の列は \( Q \) の列の線形結合で書け、さらに \( Q \) の列は \( x_1,\dots,x_m \) の張る空間 \( S \) を張るので、各 \( y_i \) も \( S \) に属する。

したがって \( y_1,\dots,y_m \) は \( S \) に属し、上記の内積関係を満たすので、これは \( x_1,\dots,x_m \) の双対基底である。

次に双対基底の一意性を示す。

いま、\( Z=[z_1\,\dots\,z_m]\in M_{n,m} \) に対し、各列 \( z_j \) が \( S \) に属し、かつ

Z^{*}X=I_m

を満たすと仮定する。

このとき、前と同様に \( X=QR \) を用いると

Z^{*}QR=I_m

となる。

\( Z \) の列は \( S \) に属するので、ある \( W\in M_m \) が存在して

Z=QW

と書ける。

これを上の関係に代入すると

(QW)^{*}QR=W^{*}R=I_m

となり、\( R \) が可逆であることから

W^{*}=R^{-1},\qquad W=R^{-*}

が従う。したがって

Z=QW=QR^{-*}=Y

が成立し、双対基底は一意であることが示された。

さらに、\( y_1,\dots,y_m \) の双対基底が \( x_1,\dots,x_m \) であることを示す。

すでに \( y_i^{*}x_j=\delta_{ij} \) が成り立っているので、双対の定義から \( x_1,\dots,x_m \) は \( y_1,\dots,y_m \) の双対基底である。

最後に \( n=m \) の場合を考える。

このとき \( X \) は正方可逆行列であり、

X^{-*}=(X^{-1})^{*}

が定義できる。

ところで

(X^{-*})^{*}X=X^{-1}X=I_n

が成り立つので、\( X^{-*} \) の列ベクトル \( y_1,\dots,y_n \) は \( \mathbb{C}^n \) の基底となり、さらに \( y_i^{*}x_j=\delta_{ij} \) を満たす。ゆえにこれらの列は \( x_1,\dots,x_n \) の双対基底である。

以上により、与えられた主張はすべて示された。


行列解析の総本山

総本山の目次📚

[行列解析]総本山📚
行列解析の総本山。行列解析の内容を網羅的かつ体系的に整理しています。線形代数の学習を一通り終えた方が、次のステップとして取り組むのに最適です。行列に関する不等式を研究するには、行列解析の知識が欠かせません。

記号の意味🔎

[行列解析9.0]主要な記号一覧🔎
行列解析で使用している記号や用語の簡単な説明です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました