[行列解析2.1.p17]QR分解とグラム–シュミット法の関係

2.ユニタリ相似とユニタリ同値

2.1.p17

2.1.問題17

\( A \in M_{n,m} \)、\( n \geq m \)、かつ \(\mathrm{rank}(A) = m \) とする。

このとき、A の列に左から右へとグラム–シュミット法を適用する手順を記述せよ。

この操作により、列ベクトルごとに次のような明示的な分解 \( A = QR \) が得られる理由を説明せよ:

  • \( Q \in M_{n,m} \) は直交化された列をもつ行列
  • \( R \in M_m \) は上三角行列

この分解は式 (2.1.14) における QR分解とどのように関連するか?

ヒント

行列 \( A\in M_{n,m} \) の各列ベクトルにグラム–シュミット法を適用すると、互いに直交する新しい列ベクトルの組が得られる。

この列を正規化すると直交正規系となり、それらを並べた行列が \( Q \) になる。

また、もとの列が直交化された列の一次結合として表されることから係数行列 \( R \) が得られ、これは上三角行列になる。

これにより \( A=QR \) の形が得られる。

解答例

行列 \( A=[a_{1},a_{2},\ldots ,a_{m}] \) の列ベクトルを対象に、左から右へ順番にグラム–シュミット法を適用する。まず最初の列について

u_{1}=a_{1},\qquad q_{1}=\frac{u_{1}}{\|u_{1}\|}

次に \( k\geq 2 \) に対して、既に得られている \( q_{1},\ldots ,q_{k-1} \) を用いて

u_{k}=a_{k}-\sum_{j=1}^{k-1}(q_{j}^{T}a_{k})\,q_{j},\qquad 
q_{k}=\frac{u_{k}}{\|u_{k}\|}

とおく。ここで \( u_{k} \) は直交化後のベクトル、\( q_{k} \) は正規直交化後のベクトルである。得られた列ベクトルを並べた行列

Q=[q_{1},q_{2},\ldots ,q_{m}]

は \( Q^{T}Q=I_{m} \) を満たすので、列直交行列になる。

次に、各 \( a_{k} \) が直交化された列ベクトルの一次結合で表されることから

a_{k}=\sum_{j=1}^{k}r_{jk}q_{j},\qquad r_{jk}=q_{j}^{T}a_{k}

が成り立つ。この係数 \( r_{jk} \) を成分とする行列

R=(r_{jk})_{1\le j\le k\le m}

は \( j>k \) の成分が 0 になるため上三角行列である。この構成より

A=QR

が得られる。仮定より \( \operatorname{rank}(A)=m \) なので各 \( u_{k} \) は 0 にならず、したがって各列 \( q_{k} \) は正規化可能である。

さらに \( q_{k} \) を正規化しているので、\( Q \) の列は直交正規となる。

このとき対角成分 \( r_{kk}=\|u_{k}\|\ge 0 \) であり、非負に取ることで QR 分解の一意性(符号の不定性の解消)と一致する。

したがって、ここで得られた分解は直交正規な列をもつ \( Q\in M_{n,m} \) と、対角成分が非負の上三角行列 \( R\in M_{m} \) による標準的 QR 分解と一致する。すなわち、グラム–シュミット法により構成された \( Q \) と \( R \) は QR 分解の具体的構成法を与えていることになる。


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