[行列解析2.1.9]定理

2.1.9

定理 2.1.9.

\( A \in M_n \) が正則(非特異)であるとする。このとき、\( A^{-1} \) が \( A^{*} \) に相似であるのは、ある正則行列 \( B \in M_n \) が存在して \( A = B^{-1} B^{*} \) が成り立つ場合に限る。

証明.

もし正則行列 \( B \in M_n \) が存在して \( A = B^{-1} B^{*} \) であるならば、

A^{-1} = (B^{*})^{-1} B

となる。そして

B^{*} A^{-1} (B^{*})^{-1} = B (B^{*})^{-1} = (B^{-1} B^{*})^{*} = A^{*}

が成り立つので、\( A^{-1} \) は相似変換行列 \( B^{*} \) により \( A^{*} \) に相似である。

逆に、もし \( A^{-1} \) が \( A^{*} \) に相似であるなら、正則行列 \( S \in M_n \) が存在して

S A^{-1} S^{-1} = A^{*}

が成り立ち、したがって \( S = A^{*} S A \) である。ここで \( \theta \in \mathbb{R} \) に対して \( S_\theta = e^{i\theta} S \) とおくと、

S_\theta = A^{*} S_\theta A, \quad S_\theta^{*} = A^{*} S_\theta^{*} A

が成り立つ。これら2つの式を加えると

H_\theta = A^{*} H_\theta A

を得る。

ただし \( H_\theta = S_\theta + S_\theta^{*} \) はエルミート行列である。もし \( H_\theta \) が特異であるならば、ある非零ベクトル \( x \in \mathbb{C}^n \) が存在して

0 = H_\theta x = S_\theta x + S_\theta^{*} x

が成り立つ。このとき

- x = S_\theta^{-1} S_\theta^{*} x = e^{-2i\theta} S^{-1} S^{*} x

となり、したがって

S^{-1} S^{*} x = - e^{2i\theta} x

を得る。ここで、\( -e^{2i\theta_0} \) が \( S^{-1} S^{*} \) の固有値ではないように \( \theta_0 \in [0,2\pi) \) を選べば、得られるエルミート行列 \( H = H_{\theta_0} \) は非特異で、かつ \( H = A^{*} H A \) を満たす。

次に、任意の複素数 \( \alpha \) で \( |\alpha| = 1 \) かつ \( \alpha \) が \( A^{*} \) の固有値でないものを選ぶ。このとき

B = \beta (\alpha I - A^{*}) H

と定める。

ただし複素数パラメータ \( \beta \neq 0 \) は適当に選ぶ。

すると \( B \) は正則である。

目標は \( A = B^{-1} B^{*} \)、すなわち \( BA = B^{*} \) を得ることである。

計算すると

B^{*} = H (\overline{\beta} \, \overline{\alpha} I - \overline{\beta} A), \quad
BA = \beta (\alpha I - A^{*}) H A = \beta (\alpha H A - H)

となる。

よって

BA = H(\alpha \beta A - \beta I)

が得られる。したがって、もし非零の \( \beta \) を選んで

\beta = - \overline{\beta} \, \overline{\alpha}

を満たせばよい。ここで \( \alpha = e^{i\psi} \) とすると、\( \beta = e^{i(\pi - \psi)/2} \) がその解となる。∎

なお、ユニタリ行列を2×2ブロック行列の形で表すと、その非対角ブロックの階数は等しく、対角ブロックの階数は単純な公式で関係づけられる。


参考:Matrix Analysis:Second Edition ISBN 0-521-30587-X.(当サイトは公式と無関係です)

コメント

タイトルとURLをコピーしました