[行列解析1.4.P11]非簡約上ヘッセンベルグ行列の階数と固有値

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.4.P11

1.4.問題11

行列 \(A \in M_n\) が非簡約上ヘッセンベルグ行列(unreduced upper Hessenberg matrix、参照: 0.9.9)であると仮定する。

上ヘッセンベルグ行列
A =
\begin{bmatrix}
a_{11} & *      & *      & \cdots & *        \\
a_{21} & a_{22} & *      & \cdots & *        \\
0      & a_{32} & a_{33} & \cdots & *        \\
\vdots & \ddots & \ddots & \ddots & \vdots   \\
0      & \cdots & 0      & a_{n,n-1} & a_{nn}
\end{bmatrix}

なぜすべての \(\lambda \in \mathbb{C}\) に対して \(\operatorname{rank}(A - \lambda I) \ge n-1\) が成り立つのか説明せよ。

そして、これにより \(A\) のすべての固有値が幾何重複度 1 を持つこと(すなわち、\(A\) が非退化行列であること)を導け。

ヒント

非簡約上ヘッセンベルグ行列では、第1副対角成分がすべて非零であることが重要である。行列 \( A-\lambda I \) の行基本変形を考えると、この構造により零空間の次元が高々1に制限されることが分かる。

解答例

\( A\in M_n \) を非簡約上ヘッセンベルグ行列とする。このとき、\( A \) は上ヘッセンベルグ行列であり、さらにすべての第1副対角成分が非零である。すなわち、 \( a_{i+1,i}\neq 0 \) がすべての \( i=1,\dots,n-1 \) について成り立つ。

任意の \( \lambda\in\mathbb{C} \) に対して行列 \( A-\lambda I \) を考える。この行列も上ヘッセンベルグ構造を保ち、第1副対角成分は \( a_{i+1,i} \) のままであり、依然としてすべて非零である。

\( (A-\lambda I)x=0 \) を満たすベクトル \( x=(x_1,\dots,x_n)^{\top} \) を考える。最下行から順に方程式を見ると、第 \( i+1 \) 行目の方程式には必ず \( a_{i+1,i}x_i \) が現れ、しかも係数は非零であるため、\( x_i \) はそれ以降の成分によって一意に定まる。

したがって、自由に選べる成分は高々1つであり、零空間の次元は \( \dim\ker(A-\lambda I)\le 1 \) である。よって階数と次元の関係より、 \( \operatorname{rank}(A-\lambda I)\ge n-1 \) がすべての \( \lambda\in\mathbb{C} \) に対して成り立つ。

特に \( \lambda \) が \( A \) の固有値である場合でも、\( \ker(A-\lambda I) \) の次元は 1 以下である。固有値であれば零空間は自明でないため、 \( \dim\ker(A-\lambda I)=1 \) となる。

以上より、\( A \) の任意の固有値は幾何重複度 1 を持つ。したがって、\( A \) はすべての固有値が非退化である行列である。


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