[行列解析1.3.P7]対角化可能行列の平方根の存在と反例

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.3.P7

1.3.問題7

\( A \in M_n \) が \( B \in M_n \) の平方根であるとは、\( A^2 = B \) が成り立つことをいう。

すべての対角化可能な \( B \in M_n \) が平方根を持つことを示せ。

次の行列

B = \begin{pmatrix}
0 & 1 \\
0 & 0
\end{pmatrix}

は平方根を持つだろうか。その理由を述べよ。

ヒント

対角化可能な行列は \( B = S \Lambda S^{-1} \) と表せる。ここで \( \Lambda \) は対角行列である。対角行列の平方根は各対角成分ごとに考えることができる。一方、対角化できない行列については、平方根が存在すると仮定したときに生じる性質を調べると矛盾が現れる。

解答例

まず、\( B \in M_n \) が対角化可能であると仮定する。このとき、ある正則行列 \( S \) と対角行列 \( \Lambda = \mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) \) が存在して \( B = S \Lambda S^{-1} \) と書ける。

各固有値 \( \lambda_i \) に対して複素数の平方根 \( \mu_i \) を一つ選び、 \( \mu_i^2 = \lambda_i \) を満たすようにする。すると \( M = \mathrm{diag}(\mu_1,\ldots,\mu_n) \) とおけば \( M^2 = \Lambda \) が成り立つ。

M^2
=
\mathrm{diag}(\mu_1^2,\ldots,\mu_n^2)
=
\mathrm{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n)
=
\Lambda

ここで \( A = S M S^{-1} \) と定めると、 \( A^2 = S M^2 S^{-1} = S \Lambda S^{-1} = B \) となる。したがって、すべての対角化可能な行列 \( B \) は平方根をもつ。

次に、 \( B = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \) を考える。この行列は固有値 0 のみをもち、対角化できない。

仮に \( B \) が平方根をもつとし、\( A^2 = B \) を満たす行列 \( A \) が存在すると仮定する。このとき、\( B^2 = O \) であるから \( A^4 = O \) が成り立つ。よって \( A \) は冪零行列であり、固有値はすべて 0 である。

冪零行列 \( A \) の平方 \( A^2 \) は、ジョルダン標準形において零行列か、少なくとも階数が大きく低下する形になる。しかし与えられた \( B \) は階数 1 をもち、そのジョルダン標準形は大きさ 2 のジョルダンブロックである。このような行列は冪零行列の平方として現れない。

したがって、 \( B = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} \) は平方根をもたない。


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