[行列解析1.3.P12]積行列の対角化可能性と正則性の役割

1.固有値・固有ベクトル・相似

1.3.P12

1.3.問題12

\( A, B \in M_n \) とし、\( A \) または \( B \) が正則であるとする。

もし \( AB \) が対角化可能ならば、\( BA \) も対角化可能であることを示せ。

さらに、

A = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}, \quad 
B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}

という例を用いて、\( A \) と \( B \) の両方が特異行列の場合にはこの主張が成立しないことを示せ。

ヒント

\( A \) または \( B \) が正則であるとき、\( AB \) と \( BA \) は相似であることを示せばよい。

相似な行列は同時に対角化可能性を共有する。

後半の反例では、具体的に \( AB \) と \( BA \) を計算し、それぞれの固有値とジョルダン標準形を調べる。

解答例

まず \( A \) または \( B \) が正則であると仮定する。たとえば \( B \) が正則であるとする。このとき

BA = B(AB)B^{-1}

が成り立つ。したがって \( BA \) は \( AB \) と相似である。相似な行列は同じジョルダン標準形を持つため、\( AB \) が対角化可能ならば \( BA \) も対角化可能である。\( A \) が正則な場合も同様に \( AB = A^{-1}(BA)A \) より結論が従う。

次に、両方が特異行列である場合の反例を示す。与えられた \( A = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \), \( B = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} \) について積を計算すると、

AB = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}, \quad
BA = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix}

となる。行列 \( BA \) は零行列であり、固有値は \( 0 \) のみで幾何重複度は 2 であるから対角化可能である。一方、\( AB \) は固有値 \( 0 \) を重複度 2 で持つが、固有空間は一次元であり、ジョルダンブロックを持つため対角化不可能である。

以上より、\( A \) または \( B \) が正則である場合には主張が成り立つが、両方が特異行列の場合には必ずしも成り立たないことが示された。


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