[行列解析1.3.29]定理 1.3.29.

定理 1.3.29.

\( F = \{ A_\alpha : \alpha \in I \} \subset M_n(\mathbb{R}) \)、\( G = \{ B_\alpha : \alpha \in I \} \subset M_n(\mathbb{R}) \) を実行列の族とする。

もし正則行列 \( S \in M_n \) が存在して、すべての \(\alpha \in I\) に対して \( A_\alpha = S B_\alpha S^{-1} \) が成り立つなら、正則実行列 \( T \in M_n(\mathbb{R}) \) が存在して、すべての \(\alpha \in I\) に対して \( A_\alpha = T B_\alpha T^{-1} \) が成り立つ。

特に、複素数体上で相似な2つの実行列は、実数体上でも相似である。

証明.

\( S = C + i D \) と表す。

ただし \( C, D \in M_n(\mathbb{R}) \) とする。

前の補題により、ある実数 \(\tau\) が存在して \( T = C + \tau D \) が正則であることが保証される。

相似関係 \( A_\alpha = S B_\alpha S^{-1} \) は次の恒等式と同値である:

A_\alpha (C + i D) = (C + i D) B_\alpha

この恒等式の実部と虚部を比較すると、

A_\alpha C = C B_\alpha,   A_\alpha D = D B_\alpha

が得られる。したがって、任意の \(\alpha \in I\) に対して

A_\alpha T = A_\alpha (C + \tau D) = C B_\alpha + \tau D B_\alpha = (C + \tau D) B_\alpha = T B_\alpha

が成り立つので、\( A_\alpha = T B_\alpha T^{-1} \) となる。

この定理の直接の結果として、(1.3.21) の実数版が得られる。


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