定理 1.3.22 には多くの応用があり、そのいくつかは次章以降で現れる。ここではそのうちの 4 つのうちの 1 つを示す。
例 1.3.23. 低ランク行列の固有値
\( A \in M_n \) が \( A = X Y^{T} \) と因数分解されており、ここで \( X, Y \in M_{n,r} \)、かつ \( r < n \) とする。
このとき、\( A \) の固有値は \( r \times r \) 行列 \( Y^{T} X \) の固有値と \( n - r \) 個の 0 からなる。
例えば、\( n \times n \) の全ての成分が 1 の行列 \( J_n = e e^{T} \)(式 (0.2.8))を考える。この固有値は、\( 1 \times 1 \) 行列 \( e^{T} e = [\,n\,] \) の固有値、すなわち \( n \)、および \( n - 1 \) 個の 0 から構成される。
\( x, y \in \mathbb{C}^n \) に対して階数が高々 1 の行列 \( A = x y^{T} \) の固有値は \( y^{T} x \) と \( n - 1 \) 個の 0 である。
また、\( x, y, z, w \in \mathbb{C}^n \) に対して階数が高々 2 の行列 \( A = x y^{T} + z w^{T} = [\,x \; z\,][\,y \; w\,]^{T} \) の固有値は、 次の行列
\begin{pmatrix} y^{T} x & w^{T} x \\ y^{T} z & w^{T} z \end{pmatrix}
(式 (1.2.4b))の 2 つの固有値と \( n - 2 \) 個の 0 である。
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