[行列解析1.0.2]制約付き極値と固有値

固有値・固有ベクトル・類似性

1.0.2 制約付き極値と固有値

本章で取り上げるもう一つの重要な概念は、固有ベクトルと固有値の考え方です。\( Ax \) が \( x \) のスカラー倍となるようなゼロでないベクトル \( x \) は、行列や線形変換の構造を解析するうえで重要な役割を果たします。しかし、このようなベクトルは、より初歩的な場面――つまり、幾何的制約の下で実対称二次形式を最大化(または最小化)する問題――にも現れます。

具体的には、実対称行列 \( A \in M_n(\mathbb{R}) \) が与えられたとき、次の問題を考えます。

(1.0.3)
\text{maximize } x^T A x, \\
\quad \text{subject to } x \in \mathbb{R}^n, \; x^T x = 1

このような制約付き最適化問題に対して、通常はラグランジュ関数を導入します。

ラグランジアンは

L = x^T A x - \lambda x^T x

となります。極値を取るための必要条件は

0 = \nabla L = 2(Ax - \lambda x) = 0

です。したがって、\( x \in \mathbb{R}^n \) で \( x^T x = 1 \)(よって \( x \neq 0 \))を満たすベクトルが \( x^T A x \) の極値を与えるならば、そのベクトルは次の方程式を満たさなければなりません。

A x = \lambda x

ここで、非零ベクトル \( x \) に対して \( Ax = \lambda x \) が成り立つとき、そのスカラー \(\lambda\) を行列 \(A\) の固有値と呼びます。


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