8.2.3 補題:正の行列に対する固有ベクトルの位相調整
\( A \in M_n \) が正の行列であるとする。
もし \( \lambda, x \) が \( A \) の固有ペアであり、かつ \( |\lambda| = \rho(A) \) を満たすならば、ある実数 \( \theta \in \mathbb{R} \) が存在して、
e^{-i\theta}x = |x| \gt 0
が成り立つ。
(証明)仮定より、\( x \in \mathbb{C}^n \) は零でないベクトルであり、次が成立している:
|Ax| = |\lambda x| = \rho(A)|x|.
補題 (8.2.1) により、\( A|x| = \rho(A)|x| \) かつ \( |x| \gt 0 \) が成り立つ。また、\( |Ax| = \rho(A)|x| = A|x| \) であり、\( A \) の各行の要素が正であることから、補題 (8.1.8b) により、ある実数 \( \theta \in \mathbb{R} \) が存在して次が成立する:
e^{-i\theta}x = |x|.
したがって、位相を適切に選ぶことで固有ベクトル \( x \) は正のベクトル \( |x| \) と一致することが示された。
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